クアラルンプールに拠点を持つ日系企業からのご相談でした。仕入の金額が、取扱量の増減と噛み合わない月が続いている。担当している社員は一名で、発注から検収までをその者が通していた、という状況です。
最初にお願いしたのは、社内にある記録を並べていただくことでした。発注書、検収の記録、支払いの履歴、そして当該社員の勤怠。これらは御社の中にあるもので、当社が取りに行くものではありません。
並べた結果、特定の仕入先への発注が、他と比べて明らかに頻度が高いことが分かりました。しかもその発注日の多くで、当該社員が外出しています。ここまでで、確かめるべき日と場所が決まりました。
ご相談から、確認すべき日を絞り込むまでに数日。この段階では当社はまだ現地で動いていません。
01どこまでを社内で、どこからを当社で
この案件で確認の日数が短く済んだのは、社内の記録が揃っていたためです。分担を整理すると、次のようになります。
- 特定の仕入先への発注の頻度と金額の推移
- 発注書と検収の記録が、誰の手を通っているか
- 当該社員の勤怠と、外出の記録
- 支払いの履歴と、その承認の流れ
ここまでで、確かめるべき日と場所が決まりました。
- 発注が集中していた仕入先が、実際に事業を行っているか
- その所在地に、取引の規模に見合う実体があるか
- 登記上、その会社と当該社員につながりがないか
- 外出とされた日に、当該社員がその場所へ行っているか
現地での確認は当社が行いました。日本からの渡航はありません。
02確認できたこと
発注が集中していた仕入先は、登記上は実在していました。ただし所在地として登録されていたのは、取引の規模とは釣り合わない小さな区画でした。日中に人の出入りはありましたが、扱われている量は、発注書に並ぶ数字とは合いません。
登記を確認したところ、その会社の役員として記載されていた人物と、当該社員との間に、直接のつながりを示す記載はありませんでした。この点は確認できなかったこととして、そのまま報告書に記載しています。
外出とされていた日については、当該社員がその区画へ立ち寄っていることを確認しました。滞在は長くありません。日時と場所を記録し、写真は撮れた範囲でお付けしました。
当社が書いたのはここまでです。横領があったかどうか、当該社員をどう扱うべきかは記載していません。事実を並べるところまでが当社の仕事で、その先は御社と、御社が相談される弁護士が決められることだからです。
03その後
報告書をお渡ししたあと、御社は弁護士に相談され、社内での対応を進められました。当社はその過程には関与していません。ご本人への聴取にも同席していません。事実の確認と、その先の対応は別の仕事だと考えているためです。
- 社内の記録が揃っており、確かめるべき日と場所が先に決まっていた
- 対象がクアラルンプール市内で、移動に日数がかからなかった
- 「何を確認できれば足りるか」をご相談の段階で決めていた
- 証拠を積み増すことではなく、事実の確認が目的だった
逆に、いつ起きているのか分からない状態からのご依頼は、あたりを付けるところから始まるため日数がかかります。
この案件でいちばん効いたのは、御社側の準備でした。当社が現地で動いた日数は多くありません。記録を並べる作業を社外に出すと、そのぶん費用がかかります。社内でできる部分は社内で進めていただいたほうが、結果として安く済みます。
なお、確認の結果として何も出てこない案件も実際にあります。申請どおりに動いていた、説明と食い違う点は見当たらなかった——その報告書も、社内で区切りをつけるための材料になります。当社はどちらの結果になっても、確認できたことをそのままお渡しします。
いま社内で何が起きているか、それだけで結構です。何を並べれば確認できるかからお答えします。秘密保持契約書と暴力団排除に関する誓約書は当社から提出します。
掲載にあたり、案件が特定されない範囲で内容を調整しています。




