ジョホールバルの企業と、新しく取引を始めるかどうかという段階でのご相談でした。先方から届いていた資料は揃っています。会社案内、登記の写し、担当者の名刺、過去の実績を示す書面。日本側の担当者も一度、現地で面談されていました。
それでも決めきれなかったのは、求められた前払いの割合が、通常より高かったためです。理由の説明はあり、筋も通っている。ただ、確かめる手段がない。その状態でのご依頼でした。
問題が出たのは、登記されている住所へ行ったときです。
ご相談から書面の確認までが2日、現地での確認に着手したのが4日目でした。
01登記の住所にあったもの
登録されていた住所は、市街地のオフィスビルの一室でした。行ってみると、そこにあったのは別の会社の事務所です。看板も、案内板の表記も、資料に書かれていた社名ではありません。
ただし、これだけではおかしいとは言えません。マレーシアでは、会社秘書役(company secretary)の事務所を登記上の住所にしている会社が数多くあります。会社秘書役は法令上必要とされる役割で、書類の管理や届出を代行します。その事務所の住所が登記に載ること自体は、まったく通常の形です。
- 登記の記載は正しく、会社は実在している
- 登記住所は、会社秘書役の事務所と思われる
- したがって、事業を行っている場所は別にあるはず
- その「別の場所」が、資料のどこにも書かれていなかった
ここが分かれ道でした。事業所の住所を尋ねれば済む話ですが、そのやり取り自体が相手に伝わります。
02事業をしている場所を探した
ご依頼者様と相談のうえ、相手に問い合わせることはせず、当社で確認を進めました。登記に記載されていた役員の情報、届いていた書面に残る手がかり、過去の実績として示されていた案件。そこから、事業が行われているとされる場所を絞り込みました。
結果として確認できたのは、工業団地の一角にある、小規模な事務所でした。人はいます。稼働もしています。ただし規模は、示されていた実績が示す事業の大きさとは釣り合いません。設備も、扱われている量も、書面から受ける印象とは違いました。
ここでも当社は、その会社が虚偽の説明をしているとは書いていません。示されていた実績が他社との共同のものである可能性も、外注を使っている可能性もあります。当社が書いたのは、見えたものだけです。
03その後
報告書には、確認できた事実だけを並べました。登記の記載は正しいこと。登記住所は会社秘書役の事務所と見られること。事業を行っている場所は別にあり、その規模はこうであったこと。写真は撮れた範囲でお付けしました。
取引すべきかどうかは書いていません。御社はこの報告をもとに、取引そのものは進め、前払いの割合を組み直す形で先方と話をされました。当社はその交渉には関与していません。
- 書類が本物であることと、事業の実体があることは、別の話です
- 登記住所に会社がないこと自体は、マレーシアでは珍しくありません
- 問題になるのは、事業をしている場所がどこにも書かれていない場合です
- 相手に住所を尋ねれば済みますが、そのやり取り自体が相手に伝わります
- 取引をやめる、という結論だけが答えではありません。条件を変えるという道もあります
当社は「やめるべき」とも「進めてよい」とも申し上げません。判断の材料をお渡しするところまでです。
04同じ確認をご希望の場合
この案件でかかったのは、書面の確認に2日、現地での確認に数日です。会社番号が分かっていたため、対象の特定に時間を使わずに済みました。社名の綴りしか分からない状態からのご依頼では、そのぶん日数が増えます。
取引に入る前の確認は、決まってからでは遅くなります。前払いや保証金の話が出た段階でご相談いただくと、間に合うことが多いと思います。
社名と会社番号、届いている資料。まずはそれだけで結構です。何を確かめられるか、何日かかるかをお答えします。秘密保持契約書と暴力団排除に関する誓約書は当社から提出します。
掲載にあたり、案件が特定されない範囲で内容を調整しています。




